結論から書きます。Home Assistant で SwitchBot を使うなら、Bluetooth 直結を主、クラウド API を補助にした併用が扱いやすい構成です。どちらか一方を選ぶ問題ではありません。
理由は、この2つが「速い・遅い」ではなく 動かせる機器の種類そのものが違う からです。
- Bluetooth 直結(統合名: SwitchBot Bluetooth): SwitchBot ハブが不要でローカル完結。ボット・カーテン・ロック・温湿度計・開閉/人感センサー・プラグミニなど、SwitchBot 本体の機器を直接操作できます
- クラウド API(統合名: SwitchBot Cloud): SwitchBot ハブが必須。代わりに エアコンやテレビなどの赤外線リモコン家電 を扱えます
賃貸で一番やりたい「帰宅前にエアコンを入れる」は赤外線の操作なので、Bluetooth 直結だけでは実現できません。逆に「玄関が開いたら照明」のような即応性が要る自動化は、クラウド経由だと待たされます。だから併用、という話です。
Bluetooth と クラウド API は「何が動くか」が違う
両者の違いを表にまとめます。どちらも Home Assistant に標準で入っている統合で、HACS などの追加インストールは不要です。
| Bluetooth 直結 | クラウド API | |
|---|---|---|
| 統合名 | SwitchBot Bluetooth | SwitchBot Cloud |
| SwitchBot ハブ | 不要 | 必須 |
| HA 側に必要なもの | Bluetooth アダプタまたは Bluetooth プロキシ | インターネットとトークン |
| 赤外線家電(エアコン・テレビ) | 使えない | 使える(制限あり) |
| ネット回線が切れたとき | 動く | 動かない |
| 反応の速さ | 速い | センサーは10分ごとの取得 |
| 事実上の上限 | 電波が届く範囲 | 1日10,000リクエスト |
赤外線家電については、公式ドキュメントに「状態は Home Assistant から送った直前のコマンドから推測されるため、他の方法で操作すると実際とずれることがある」と書かれています。また、多くの赤外線家電は ON/OFF しか送れないとされています。エアコンの温度や風量まで細かく操作したい場合は、SwitchBot アプリ側でシーンを作り、それを Home Assistant から呼ぶほうが確実です。
Bluetooth 直結の設定:ハブ不要、ただし HA 側に Bluetooth が要る
設定そのものは簡単で、Home Assistant 側で Bluetooth が使える状態になっていれば、電波の届く範囲にある SwitchBot 機器は自動的に検出されます。「設定 → デバイスとサービス」に候補として出てくるので、そこから追加するだけです。
つまずきやすいのは、むしろ Home Assistant 本体に Bluetooth があるかどうか です。
- Home Assistant Green には無線機能が一切ありません。Wi-Fi も Bluetooth も Zigbee も Thread も内蔵していないと、メーカーのサポート記事に明記されています。USB の Bluetooth アダプタを挿すか、後述の Bluetooth プロキシを使う必要があります
- Raspberry Pi 4 / 5 は Bluetooth を内蔵しているので、そのまま使えます
- ロックのような暗号化された機器は、SwitchBot アカウントでログインして鍵を取り込む方法と、キー ID と暗号化キーを手で入力する方法の2通りがあります。Google や Apple のアカウントでログインしている SSO アカウントは非対応とされています
- SwitchBot アプリで付けた機器名は Home Assistant に引き継がれません。追加後に自分で名前を付け直すことになります
もうひとつの落とし穴が 電波の距離 です。ワンルームで本体と機器が同じ部屋にあるなら1台で足りますが、部屋をまたいだり、玄関のロックまで届かせようとすると厳しくなります。その場合は ESP32 のボードに ESPHome の Bluetooth プロキシを書き込んで中継させるのが定番の解決策です。ボード自体は数千円で、ブラウザから書き込めるようになっています。
クラウド API の設定:トークンと1日10,000回の上限
こちらはハブが必要な代わりに、Bluetooth 周りの悩みが消えます。手順は次の通りです。
- SwitchBot アプリを v6.14 以降に更新する
- プロフィール → 設定 → アプリについて を開き、バージョン番号を10回タップして開発者向けオプションを表示する
- 開発者向けオプションから、トークンとシークレットキーを取得して控える
- Home Assistant の「統合を追加」で SwitchBot Cloud を選び、その2つを貼り付ける
登録済みの対応機器が自動的に出てきます。API の署名処理(v1.1 では HMAC-SHA256 の署名が必要とされています)は統合が中でやってくれるので、こちらで意識することはありません。
注意すべき制限は2つです。
1日10,000リクエストの上限。 超えると “Unauthorized” が返り、その日は使えなくなります。標準のポーリングはセンサーが600秒(10分)ごとなので、10台つないでも1日1,440回程度。通常の使い方なら余裕がありますが、「反応が遅いから」と更新間隔を無理に詰めると危険です。
センサーの更新が10分ごと。 水漏れ・開閉・人感・存在センサーとロボット掃除機は Webhook でほぼリアルタイムに通知されますが、その Webhook を受けるには外部から到達できる URL か Home Assistant Cloud の契約が必要です。それ以外の温湿度計などは10分間隔なので、「暑くなったらエアコン」を作ると最大10分遅れます。この用途こそ Bluetooth 直結の出番です。
賃貸1LDKでの組み合わせ方と、3つめの選択肢
私が賃貸向けに勧める分担はこうです。
- Bluetooth 直結:温湿度計、開閉センサー、ボット、ロック。速さと、ネットが落ちても動くことが効く機器
- クラウド API:エアコン、テレビ、シーリングライト。赤外線なのでこちらでしか動かない機器
ハブは赤外線を飛ばす役として必要になります。温湿度センサーも内蔵していてバランスが良いのは SwitchBot ハブ2(9,980円前後)、価格を抑えるなら SwitchBot ハブミニ(Matter対応)(5,980円前後)、接続の安定性と接続台数を重視するなら SwitchBot ハブ3(2026年8月の価格改定後は16,980円前後)です。
3つめの経路として Matter ブリッジ もあります。Matter 対応のハブを Home Assistant に Matter 機器として出す方法で、クラウドを経由しないぶん反応が速くなります。ただし Home Assistant OS 側に Matter Server アドオンを入れる必要があり、家庭内ネットワークで IPv6 と mDNS が通っていることが前提とされています。またブリッジ経由で出せる機器と機能には制限があります。
いきなり3つ全部を並べると、同じ機器が二重に登録されて訳が分からなくなります。まずは Bluetooth 直結だけで1台つなぎ、赤外線家電が必要になった段階でクラウド API を足す。Matter はその次、という順番が無難です。
まとめ
- Home Assistant × SwitchBot は「Bluetooth 直結」と「クラウド API」の2経路。速さの差ではなく、扱える機器の種類が違う
- Bluetooth 直結はハブ不要・ローカル完結で速いが、赤外線家電は扱えず、電波の距離が壁になる
- クラウド API はハブ必須。エアコンなど赤外線家電を扱える代わりに、1日10,000リクエストの上限と、センサー10分間隔という制約がある
- Home Assistant Green には Bluetooth が内蔵されていないので、USB アダプタか ESP32 の Bluetooth プロキシを別に用意する
- おすすめは併用。センサーとロックは Bluetooth、エアコンとテレビはクラウド。Matter ブリッジは物足りなくなってから足す